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2016年。今年もいろんな映画を観ました。テーマは大きく分けて二つ。
救いようのない絶望を感じる映画と明るい希望を見る映画。
この絶望と希望のテーマ二つに分けて、2016年に気に入った映画12本あげます!
前者は救いようもない辛いことだけど、この世界で起きている(起きるかもしれない)ことだから受け止めなくてはなりません。数日辛さを引きずります。しかしそれは、作品として素晴らしかった証拠でもあるし、やっぱり観てよかったと思えるのです。
1.カルテル・ランド
舞台はメキシコ。実話です。ゲリラ戦にもカメラが入っており、銃声も聞こえます。命がけで撮られた作品。”こんな危険なところに、よくカメラが入れたな”と思わせる部分が多くありました。
キャッチコピーは正義は揺らいでも、悪は揺るがない
まさにキャッチコピーがこの映画の全てを言い表しています。
麻薬組織の犯罪から自らの身を守るために、立ち上がった自警団。結局力を持ち、組織が大きくなってしまうと犯罪組織のように、街の人々を脅かす存在になってしまいました。
この自警団を立ち上げたミレレス医師。彼一人が理想を追求するあまり、この組織の邪魔な存在となり逮捕され、現在も収監されているそうです。
現代のチェ・ゲバラを彼の中に見た気がしました。
この組織は結局、腐敗した警察に取り込まれ悪の連鎖を断ち切れず、今に至るそうです。
これを知った後ではメキシコに旅行になんて行けなかったと思います!怖いー!
2.エル・クラン
こちらも実話を基に作られた映画です。舞台は80年代のアルゼンチンです。独裁政権時にはお役人として仕事があった一家の父親が、民主化とともに失職します。
その父親が次に選んだ仕事は誘拐でした。誘拐で食っていこうものなら、一人ではできません。
お人好しの長男などを巻き添えにして誘拐の仕事をします。
映画は終始、明るい調子の音楽が流れていて、さして重い気持ちにならず観進めることができるのですが
その分、エンディングにくらうショックが大きいです・・・。
逮捕後も、主導していた父親が罪を認めないこと、本当に救いようがありません。父親役の俳優・フランセーヤさんが本当に好演技。冷血人間をうまく演じていますが、本職はコメディアンなんだそうです。
3.アイヒマン・ショー
ナチスドイツの重要な戦犯・アイヒマンはアルゼンチンに身を隠していましたが、イスラエルに送られ、ユダヤ人の国として建国されたイスラエルという国で、中継での公開裁判を行うという作品。
この映画も実話を基にしているので、当時の映像も映画の部分で登場します。特にアイヒマンの表情や仕草は役者が演じることはできないのでしょう。
ホロコーストの被害者が証言台でショックのあまり倒れてしまうシーンも当時の映像が使われていますが、裁判を中継しているからこそ伝わる、臨場感です。
アイヒマンは虐殺のどんなショッキングな映像にも表情一つ崩さず映像を見ています。
人間がどうしてここまで卑劣になれるのか?という問題が見えてくるという、人間の弱さという絶望を感じる映画でした。
そんなアイヒマンは結局罪を何一つ認めないまま、死罪となりました。
4.とうもろこしの島
舞台はグルジア(ジョージア)。
この映画から感じたことは国境ってなんだろう?ということ。
確かにグルジアを旅行した時、国境争いのあるアブアジアに向かう道の近くを通った時、何か少し近づいては行けない雰囲気を感じ取りました。
昔からここでつつましく生活をしている農民たちは望まないにもかかわらず、戦争に巻き込まれてしまいます。
今までも繰り返されてきたであろう、農民の営み。かたや、迷彩色の男たちが銃を持ち睨み合っている風景。この対照的な風景が同居している不自然さ。これが現実なのでしょうか。
彼らは最後、洪水に飲み込まれてしまうのですが、このシーンからは環境変化の問題なんかも彷彿させ考えさせられました。
コーカサスの自然の美しさのおかげで辛さはいくらか軽減されましたが、それでも悲しみを抱えてこの作品を見終わりました。
5.木靴の樹
エルマンノ・オルミ監督の新作が公開される記念で、78年に公開された古い映画・木靴の樹。
舞台は19世紀のイタリアです。地主に仕える農奴の生活を描いている素朴な作品。古き良き時代の農民たちの生活を垣間見れる美しい映画ですが、エンディングだけとても悲しいのです・・・
主人公の少年は利発な子だということで、神父さんから学校に行くことを勧められます。長い距離を小さい身体で歩いて登校するのですが、木で作られた靴が壊れてしまうのです。
少年のお父さんが地主に無断で木を切って少年のために靴を作るのですが、木を切ったかどでその家族はこの集落から追放されてしまうことになります。
この家族の他の素行も地主にとって気に触ることがあったのかもしれません、しかし行くあてもなく突然追い出されるところでこの映画は幕を閉じるので、なんだかとてもショックな気持ちで映画館を去ることになったのでした。
そろそろ書いていて、辛くなって来たので希望を見る映画に行きます!!!
6.ストリート・オーケストラ
ブラジル・サンパウロのスラムの子どもたちと天才ヴァイオリン奏者のストーリー。こちらの作品も実話に基づくストーリーです。
人と人とが心を通じ合わせる展開は心が温かくなります。
美しい音楽はギャングだろうと誰にも敵わない
このことを知ったスラムの不良たちが音楽と真摯に向き合うことで変わっていく姿に心を打たれました。
コンクールで緊張しすぎて演奏すらできなかった天才ヴァイオリン奏者でしたが、ギャングに銃を突きつけられながら素晴らしいパガニーニを演奏したのも気持ちが良かった!
ちょっと余談です。
同じ南米のベネズエラでは、若者が非行に走らぬよう貧しい子どもたちのために政府が音楽教育プログラムを用意しました。それがエル・システマ。ヨーロッパでも爆発的人気を博していますが、我々も来日時にコンサートに行きましたが圧倒されました。
南米にはこんなまだ眠っている才能があるのですね!きっとブラジルもサンパウロ以外の都市でもこうやって花開く時が来るのでしょう!!
メキシコの作曲家・マルケスの作品をどうぞ!
7.歌声に乗った少年
ムハンマド・アッサーフというパレスティナ・ガザ出身の歌手がヒーローになるまでの実話を基に作られた作品です。
アラブ・アイドルという勝ち抜き歌合戦に出場して歌手になることを夢見ていた彼が夢を実現したのは奇跡のような本当の話。
ガザを出ることはすごく大変なことのようで、勝ち抜き歌合戦に出るために彼は、偽物のビザで出国しました。警察官に偽物とバレてしまいますが、アラブ・アイドルに出場する理由を告げ、歌うことで警察官の心も動かされ、無事出国できたのです。
そして、会場に着いたものの、出場にはチケットが必要で、そのチケットを手に入れることができなかった主人公でしたが、トイレで歌っていたところ、チケットを持った男性が「君の方が勝ち目があるから」とチケットを譲ってくれます。
これらの奇跡が積み重なって彼は見事優勝。三人並んで、優勝は・・・・と発表を待つ間の彼の動揺、名前が発表されて崩れてしまう彼の姿は実際の映像として映画で使われていました。
こちらはCNNで優勝した時に報道された時の映像です。
8.ノーマ東京
デンマークからやってきたノーマという世界一のレストラン。1ヶ月だけコペンハーゲンの店を閉め、東京に店をオープンするという壮大なプロジェクトを追うドキュメンタリー映画です。
ここはコペンハーゲンではないのだから、日本の食材で勝負するといいます。
日本中の食材を探りに旅し、とにかくなんでも自分の舌で食材のイメージを持とうとする彼らの冒険心。土さえも舐めて自分の感覚で食の冒険をしています。英語タイトルが "Ants on the shrimp" となっているように、前菜はアリが海老の上にのった料理。(こう説明すると気味が悪いですが、写真を見るとなんとも美しいです)
土に這っているアリを試食しているシーンは衝撃でした。
世界一というプレッシャーもあり、とにかくストイック。
スッポンを調理することにもチャレンジしましたが、なかなかのものができたにもかかわらず、完璧ではないからという理由でメニューからは外されました!オープンまで時間が間に合わなかったのです。もう少し時間があればスッポンもメニューに登ったのでしょう!
彼らの本気な姿にはため息が出るばかりです。素晴らしい!
9.みかんの丘
グルジアの絶望を見た映画でも紹介しましたが、セット映画のもう一つの作品「みかんの丘」。
こちらも同じ戦争を取り扱った映画でしたが、こちらは人間の温かさや優しさを題材にした作品でした。
主人公はある理由から戦火に巻き込まれた故郷に残っています。主人公は傷ついた兵士二人を救いましたが、二人は敵同士でした。家の中では殺し合いをしない、という決まり事を主人公は作り、憎み合っていた二人が次第に心を通わせるようになります。
最後のエンディングで主人公が故郷に残っている理由が明らかになります。戦死した息子の墓が故郷にあり、息子を置いて故郷はされないと。
そういう理由でした。
そう主人公が理由を語った相手は息子を殺した敵と仲間です。許すという人間の美しい姿が映された作品でした。
10.絵の中の池
私が観たのが、イラン映画を取り扱う「広島イラン・愛と平和の映画祭」だったため、日本語の公式ホームページが見つからず、監督のホームページから抜粋しています!
実はこの映画、イランに行った時にバスの中で見たことがありました。
もちろん、ペルシャ語でしか放送していなかったのですが、感動した映画だったので覚えていました。
何を喋っているかは雰囲気でしかつかめていないかもしれない、内容はもっと違うのかも、と不安を抱えて字幕付きを鑑賞しましたが、イランで見たときと大きな違いや発見はありませんでした。
言葉よりも映像が訴える力って大きいんだなぁと感じたのでした。
軽度の知的障害者の夫婦二人が子どもを育てる家庭ドラマなストーリーです。子どもはしっかりしているので、大きくなるにつれ、自分の父母と学校の先生などの大人を比べてしまい、反抗するようになります。
「自分たちには子どもは育てられないかもしれない」愛する子どもの反抗をいろんな葛藤を夫婦で乗り越えていくストーリーです。
母親を傷つけた子どもに対して父親が打つシーンがありましたが、父親が打ったのは愛する子どものため、そして妻のためです。しかし母親には子どもを傷つけて欲しくなかったために、夫を責めます。
お互いを想うからこそなのですが、不器用で真っ直ぐな夫婦のやり取りに胸が熱くなりました。
11.ブルックリン
女子がキュンキュンする映画です。男性陣はう〜んという反応が多かったですね!
故郷アイルランドをあとにして新天地アメリカへ移住する主人公の作品です。世話をしてくれる神父さんの協力で、仕事をしながら学校に通い、そして恋をして、アメリカという土地で自分の人生を切り開いていく主人公。
お姉さんの訃報で故郷に帰ると、アメリカに行くまでは手に入れることができなかった、いい仕事も素敵な結婚相手もそこにはあるのでした。
しかしアメリカで彼女はすでに結婚もしていたし、アメリカでの生活もあります。愛する故郷や家族を振り切る思いで自分の人生を歩むストーリーなのでした。
ファッションも素敵だったし、主人公がどんどん垢抜けて行く様は印象的でした。
12.この世界の片隅に
広島県民ならば観ないと!と声をかけられ観に行った映画だったのですが、期待していたよりずっといい映画でした!
戦時中の映画で悲しい出来事がたくさん降りかかってくるはずなのに、主人公のおっとりした性格のストーリー展開して行くので暗い気持ちにはならず、前を向く勇気をたくさんもらいました。
声の出演・のんさんの才能には驚かされます。広島の人ではない人が方言で演じると、違和感を感じることが多いのですが、彼女の広島弁は
ほとんど違和感を感じませんでした。彼女の声でこの映画にひきこまれたと言ってもいいくらいかもしれません。
戦争では悲しみにくれる暇もなく、淡々と時が過ぎて行くものなのかもしれません。前を向いて生きて行く人間の強さを感じます。
今は敵の爆撃機も飛んでいない広島の空で、戦争について、生きることについて、前向きに考えることのできた爽やかな映画でした。
長くなりました〜2016年の私の12本でした!
映画を観るのってバランスで、絶望も感動も観ることでより人生が豊かになると思うのです。そして、どちらにも学びがあります。
今年もいい映画に恵まれますように!!