長いタイトルになってしまいましたが、West-Eastern Divan Orchestra(以下、WEDO)について。
この楽団はパレスティナ人である文学者エドワード・サイードとユダヤ人である音楽家ダニエル・バレンボイムが創設した若手オーケストラです。
彼らは世間では敵対する民族同士であるにも関わらず、堅い友情で結ばれています。
ダニエル・バレンボイムはロシア系ユダヤ人、ロシア帝政末期のポグロム(ユダヤ人迫害)を避けてアルゼンチンに移民した両親のもと生まれた人物です。
彼は世界を代表するピアニストであり、指揮者です。
イスラエルが建国されユダヤ人は自分の国を持ちました。そして、バレンボイムも建国後アルゼンチンから移民しています。
2000年もの間、自分の才能だけを拠り所に世界を放浪していたユダヤ人。
イスラエルが建国され、パレスティナとの関係はうまくいかなかった。
パレスティナ自治区ガザのニュースはあまりにも有名ですが、これはその一部であり、
イスラエルに渡航した証拠がパスポートに残ってしまうと、周辺のイスラム国家(マレーシアも場合によって)には入国拒否されるほど、
イスラエルは忌み嫌われています。
中東戦争が長きにわたり、あまりにも長いので
「あー最近戦ってないから身体がなまるなー」なんて言うイスラエル人もいます。
話は戻って、WEDO。
パレスティナ、イスラエル、シリア、レバノン、シリアなどなどから来た若者たちと創られたオーケストラ。
今年で創設され15年になります。
バレンボイムはスピーチの中で言っています。我々のメッセージは政治的なことではなく、人間性であり、やさしさであり、結束である。と。
現実は傷ついた人で溢れていて、きれいごとなのかもしれないけど、それでもこうやって前を向いている彼らを私は支持します。
そして、どうしてワーグナーが演奏されることを取り上げたかということ。
ユダヤ人の多くいるイスラエルではワーグナーを演奏することはタブーとされています。
ワーグナーの楽曲はヒトラーに愛され、ナチ・ドイツに利用されました。
そのため、今でのもワーグナーの楽曲を聴くとナチを思い出してしまう人がいるのです。
バレンボイムはある時のイスラエルでの公演でワーグナーのプログラムを演奏することになっていましたが
上記の問題もあり、プログラム内容を変更して公演を行うことになりました。
アンコールでワーグナーを演奏しても良いかどうか、何時間も聴衆と話し合い
聴きたい人だけ残ってもらって演奏したんだそうです。下記の自伝に書いてありました。
それだけ、ユダヤ人とワーグナーの関係は難しい問題を抱えています。
そのユダヤ人を含むオーケストラ・WEDOがワーグナーを演奏するということ。
今年のザルツブルク音楽祭のテーマとしてイスラム教ということが挙げられていましたが
WEDOの出演は想像されましたが、まさかワーグナーを引っさげてくるとは。
他の演目もありますが、ワーグナーの演目は半年前に発売されたチケットにも関わらず、
すでに売り切れです。
あとはテアトロ・コロン(ブエノスアイレス)に行くしか、彼らのワーグナーは聴けない。
遠いなー。
WEDOの音はというと、すごく古典な響きがします。
ベルリンフィルがモダンな音を出す、と表現すると、その対極にあると言えるのではないかと思います。
中東に住む若者がどうして、このような魅力的な音を出すのか・・・?
私にはわかりませんが、とにかく、ベートーベン交響曲ではそう感じました。
バレンボイムじたい、最近来日がない。中国には去年WEDOを連れてやってきたのだけど
日本にはどうしてか、来ない。
去年のスカラ座来日公演も音楽監督であるバレンボイムが来ない。ドゥダメルとハーディングしか来ない。
聴きかったら行くしかないのか。じゃ、行ってやろうじゃないの!
テアトロ・コロンはいつかDVDが出るのを待ちます・・・
最後に