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二人の話を聞く ー現実に背を向けず見つめる

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「近くにいること」と「同じ方向を見ていること」

どちらが大事かというと私は後者の方が大事だと思っている。

全く別の分野ながら、”同じ方向を見ている”と感じたお二方をどうしてもお引き合わせしたく、ポンコツ通訳を兼ねてお二人のお話を聞きに行くことにした。

それが上写真の絵本「いわたくんちのおばあちゃん」のモデルとなった岩田さんと「ドラゴン・テール」の著者ジェイコブス氏だ。

岩田さんはお茶屋を営まれる女性で、本川小学校内にある平和資料館のボランティアガイドもされている。
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彼女のお母様は原爆に遭い、家族を皆失った。

お母様はもう他界されているが、生前は原爆のことを多く語るわけでもなく、そして岩田さん自身もボランティアガイドを昔から強く望んで始めたわけでもなかったらしい。

お母様と過ごされた期間の中で会話の断片断片を丁寧に丁寧に拾い、そして岩田さんもガイドを始めて学ばれたことをつなぎ合わせると

我々が今まで知らなかった、ヒロシマのひとつの物語が浮かび上がる。

それが絵本「いわたくんちのおばあちゃん」だ。

岩田さんと一緒にボランティアガイドをしていらっしゃる方が「岩田さんの物語は絶対に伝えていかないと」と出版を決意された。

しかし、出版社は売れる見込みが少ないことを理由に掛け合ってくれなかった。

不思議な縁から、ベストセラーとなった村上龍の「13歳のハローワーク」のイラストを手がけた、はまのゆかさんが岩田さんの物語にイラストを描いてくれることになった。

そのきっかけから、出版社は絵本の出版を手がけてくれる運びとなったんだそうだ。なんとドラマティックな。

絵本の帯には”村上龍 推薦”の文字が書かれ、今では教科書でも取り扱われるくらいの名書になっている。



そして、「ドラゴン・テイル」の著者・ジェイコブス氏。

彼は広島の平和研究所に所属し、核実験による社会変化などを研究する学者である。

お堅い職業のイメージがある学者にこんなに癒されると思わなかった、と思うくらいにフレンドリーで打ち解けて話しやすいお人柄に惹かれる人物だ。

彼はアメリカで生まれ育ち、子供の頃から核を意識しながら生きてきた結果、このような研究をする仕事に就いたんだという。


アメリカが第二次世界大戦時、兵器として原爆投下をし終戦を迎えると、ソ連も開発を始める。

そして冷戦が始まり、アメリカは核シェルターを作り、爆発が起きた時の避難訓練を定期的に行う。

対して自国・アメリカの核実験に対しては安全であることのプロパガンダが流される。

まるでそれは同じ核兵器でありながら”良い爆弾”と”悪い爆弾”があるんだと言わんばかりに。


広島長崎の悲劇以降、2000〜3000回の核実験が行われたと氏は続ける。

少なくとも、アメリカのネバダ州だけで900回、ソ連・現在のカザフスタンでは500回行われたそうだ。

その実験は成功なのか?失敗なのか?何をもって失敗なのか、成功なのか私にはわからない。犠牲者が出たら失敗なのか。

氏は続ける。「全て成功さ」

言い方がストレートすぎるかもしれないけれど、犠牲が出てこそ、実験のデータが取れるということなのだ。

全て成功。

どれほどの被害が出ているのか。そんな小さな小さな声を拾い集めるのがジェイコブス氏の仕事。

核と植民地は密接な関係があるという。

フランスは本土で核実験をしたことがない。アルジェリアに原爆を落とした過去があることは広く知られていない。

アメリカがポリネシアを選ぶのも、ソ連がカザフスタンを選ぶのも、世界に対して少数の声が届きにくい場所を選んでいるということだ。


記憶に新しいのはフランスでテロがあった時のことだ。同じタイミングでレバノンでもテロがあったが、シリアでは戦争でフランスのテロ以上に死者が出ているがレバノンも、シリアも、フランスほどには報道されない。

力を持つ国で起きた事件は大きく報道され、世界の同情をかうが、そうでなかったら、人々に知られることさえない。

実験が行われた結果、なんの被害もなく、誰も犠牲にならなかったのか?

広島長崎を知る我々にはよく理解できるはず。ただ現実を知らないだけなのだ。


氏は言う。目を向けるべきは現実。

広島のことにしても、平和だとか、許しだとか謳われているけれど、ただそこにあるのは「戦争犯罪」なのだ、と厳しく言う。

あんなに優しいジェイコブス氏の目が一瞬厳しくなる。私はそれを忘れることができない。

岩田さんも大きく頷く。

やっぱり岩田さんとジェイコブス氏は同じ方向を見ているんだな・・・

広島のことを考えるときに、今までほとんど使われてこなかった言葉・”戦争犯罪”と言う言葉。

私はこの言葉を頭の中で反芻し、衝撃を受けていた。



岩田さんがボランティアを行なっている本川小学校。

ちょうど原爆ドームを川の方から見ると小学校に背を向けることになる。


それに対してジェイコブス氏

「それがすごく皮肉だと思うんだ。原爆ドームは単なるアイコンでしかない。

我々が本当に知るべきなのは小学校で何百人もの子どもたちがあの日、死んでしまったことなのに。

その事実にさえも背を向けているように思えてしまうんだ。」


原爆ドームには確かに悲壮感はない。笑顔で自撮りする人もいるし、夜のライトアップをカップルで仲良く見上げている姿も目にする。

それは全然悪いことではない。そういうことをきっかけに核がもたらした現実を知る入り口になればいいだけの話だ。


お二人にお話を伺って感じたことは

もう一歩、我々は踏み込むべきなんだな

ということ。

広島長崎の悲劇はまだ終わっていない現実を知らなければ、平和平和と唱えたところで、鶴を折ったところでなんの役にも立たない。

これからもお二人との対話を続けていきたい。

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Commented by littlewing2000 at 2017-10-15 11:18
さなえさん、おふたりのご縁をつなぎ、そしてこうして、お話や感じたこと考えたことを伝えてくれてありがとう。リトルでゆっくりお話させてもらったときから、まずさなえさんのこの日がうまくいきますようにと祈っていたよ。「戦争犯罪」
がつんときたよ。ぜひお話聴かせてほしいな。
22日、会いに行くね。
Commented by sahne-miz at 2017-10-18 02:19
わ!嬉しい!!またいろんなことがあってお話ししたいことがたくさんです。楽しみにお待ちしておりますね!
by sahne-miz | 2017-10-12 03:26 | 学ぶ | Trackback | Comments(2)

カフェと朝ごはん、音楽を求めて17ヶ月・58カ国を旅行しました。Facebookページ「みんなのあさごはん!」やってます。もうすぐ訪問国70カ国!


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