先日、ポーランド映画を観に行きました。
映画監督・アンジェイ・ワイダ氏。彼は第二次大戦中のポーランドを丁寧に撮り続けた監督でした。
そんな監督の生前の最後のメッセージが映画とともに上映されました。
「日本の学生に映画を観せたあと感想を聞いた時、他の国では想像もつかない、思いもよらない答えが返ってきてびっくりした」と言います。
ヨーロッパでの世界大戦は負けは負け。事実は事実でそのように認知される。負けるとヒーローになることはできない。
アメリカでもたとえ負けたとしても、ヒーローになりうるが、結末で死んでしまうとヒーローではない。
しかし日本では負けても、死んでもヒーローはヒーローであり続ける。
日本では毎年のように放送される「忠臣蔵」47人の赤穂浪士がいるから、
負けても殺されても彼らはヒーローとして語り継がれている日本の風土にあるのではないか、と監督は考察していたのでした。
とても印象的な監督のメッセージでした。
ワイダ監督の作品「コルチャック先生」を鑑賞しました。
コルチャック先生が院長を務めた孤児院・ドムシエロをワルシャワを訪れた際に行ってことがあります。今でも研究所として使われている建物であるため入ることはできませんが、遠くからコルチャック先生の像を見ることができました。コルチャック先生は著名な小児科医で児童文学作家でした。ユダヤ人でしたが、あまりにも著名であるためナチの手から逃れることは十分可能でした。しかし彼の務める孤児院には200人の孤児がおり、彼らを置いていくわけにはいかない、と孤児達とトレブリンカ絶滅収容所で生涯を終えました。
私がヒーローという言葉を使うと、あまりにも軽率な気がするのですが、それでもやっぱり彼の生涯はずっと語り継いでいくべきものだと思います。この映画によってコルチャック先生が語り継がれるということは素晴らしい財産だと思います。
違う監督ですが、同じポーランドの映画・ワルシャワ44も同じタイミングで観ました。
予告編からかなり激しいですが、それでもこれは史実に基づいて作られているのでフィクションなんかではなく、現実に起きたことなのです。
ワルシャワの街は徹底的に滅ぼされたと聞いたことはあったし、ワルシャワに行った時に博物館などで資料を見たけれど、やっぱり映像で見る衝撃は大きいものです。
ワルシャワにあった蜂起の像。像はかなり大きいです。そばにいる子どもがあんなに小さく見えます。
徹底的に破壊された旧市街はレンガ一つ一つを積み重ねるところから、元どおりになるようにああだったこうだった、と住民達が思い出しながら再建され、今では世界遺産に登録されています。
ワルシャワ蜂起の博物館。
こんな小さな子どもまで戦い、女性も子どもも関係なくナチに逆らった者は誰でも、惨殺されました。ソ連が蜂起を勧めたにもかかわらず助けにも来てくれないし、ナチには10倍返し以上の威力でめちゃくちゃにされてしまいます。ワルシャワ蜂起の犠牲者はポーランド国民のヒーローであり続け、平和を願う気持ちでいっぱいだということを強く感じました。
ワルシャワ蜂起とは別に、ワルシャワにはゲットーが作られ、そこにユダヤ人は強制的に移住させられました。その中にコルチャック先生のいた孤児院もあるのですが、ワルシャワ蜂起とは別に、ゲットーの中のユダヤ人もナチに反抗した武装蜂起があります。それをワルシャワ・ゲットー蜂起と言いますが、その記念館もワルシャワ市内にあります。
彼らの名前は70年を過ぎた今でも語り継がれています。この蜂起もあっけなく鎮圧されます。強制的に移住させられたゲットーは壁で仕切られ、その中で飢餓や疫病で亡くなる人も多くいました。たとえその中で生き残っても、収容場へ送られ亡くなるのです。
かつて壁があったワルシャワ市内の壁が記念碑として残されている場所がありました。
かなり大きなゲットーだったのですが、ユダヤ人が命を落としていくうちに少しずつゲットーの敷地は小さくなっていきます。
壁があったことを知らせる記念碑、埋め込まれていますが、見つけました。どこにでもある、普通の歩道です。その前には車を修理する工場がありました。
チェコにもヒーローがらみのエピソードがあります。
エンスラポイド作戦と言って、ナチから派遣されたチェコの統治者・ラインハルト・ハイドリヒの暗殺計画がありました。
結果としては暗殺計画はかろうじて成功したのですが、そのあとの悲劇がまた10倍以上の威力で抑圧されてしまいます。計画に携わった者・協力した者すべて惨殺されました。写真の銃痕が当時の悲劇を物語っています。
それは映画ではなく小説をお勧めしたい!ローラン・ビネのHHhH。
一応映画もあるのですが。
ヨゼフ・ガブチーク、ヤン・クビシュの配役はいいんです!!ポーランドまでの映画はちゃんとドイツ兵はドイツ語を喋り、ポーランド人はポーランド語を話していたのに、この映画は英語です・・・。
英語で「君はボヘミア訛りがある」なんていうセリフ言われても、なんだか説得力がないんですー。
小説・HHhHが映画化されていますが、こちらも同じく英語です。まだこちらの映画は観ていないのですが!いつか観れる時があるといいです!
当時のナチの強さを思い知ると同時に東欧での葛藤、悲劇を知るにはいい学びです。
私は日本人だから、負けても死んでしまっても、自分の正義を貫いた彼らはやっぱり彼らはヒーローだと思います。