春が来て、また今年も広島には観光客がどっと押し寄せる季節。
街には最近スペイン語がよく聞こえる。
そんなふうに思っていたら、我々の家も今月は3組ものスペイン語話者である中南米からのゲストをお迎えすることになった。
彼らは20代、30代、そして60代と歳はばらばらだったけど、みな快活でよく話し、よく笑い、どこまでもマイペース。
正直に言うと、時々疲れることもある。
はるばる地球の裏側までやってきて、観光を楽しんでいる姿を見ていると
人生って、私たちが考えているよりもずっと面白くて、シンプルで、ポジティブなものではないかと説得させられる。
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私自身は東京と広島にしか住んだことがないのでわからないのだけど、広島の人は郷土愛が強いと聞く。
私には、ほとんどない気がする。
友人に相談しても
「たくさん旅をしているから土地に執着がないんじゃないの」と言う。
自分が日本人であることや、日本には強い思いはあるし、日本に関することを聞かれると全力で答えたいし、そのための勉強は怠りたくない。
だけど、地元のことになるとひゅっと熱が冷めてしまうのだ。
東京からUターンした理由だって思い入れもないし、むしゅの方が強く望んでここにやってきたまでのこと。
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私の旅好きの友人といつも話題になることがある。
どの街が良かったかって言うのは、どんなに美味しいものを食べたかではなく、どんな美しい風景を見たかでもなく、何よりも、どんないい出会いがあったかに尽きる、と。
私はいつもイスラエルのテルアビブとセルビアのベオグラードを好きな街として挙げているけれど、どちらの街も人が本当に良かった。
道に迷えば、必ず誰かが声をかけて助けてくれる。
ウィーンもモスクワも親友がいるから好きな街だ。
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今の私を突き動かしている言葉がある。
旅行中に骨折した時、ギリシャのレネが全部引き受けて私の面倒を見てくれた。
彼女は「ただのゲストではなく、友達として受け入れなければホストをやっている意味がない」と言っていた。
私は仕事が終わって帰ると、ゆっくり休む前にシーツを洗って、掃除機をかけて部屋を綺麗にする。
時々、何やっているんだろう?と思うときもある。
だけど、レネの言葉や泊まったゲストが残した言葉に励まされて日々を送っている。
「サナエの作った米粉パン、美味しかった!こんなパンはチリには売っていないし、ここに泊まらなければ食べることはなかっただろうね」
私たちがベストを尽くすことで”広島に来てよかった”と思ってくれたら、それはこの上ない喜びだと思う。
これが地元愛というものなのか・・・
と、ふと思った。
これから夏のバカンスシーズンがやってくる。
どんな出会いがあるだろう?
我々もどう変わるだろう?
これからも全力で迎えます。